- コラム
風の谷のナウシカの巨大飛行機バカガラスのモデル Me321 / 323 ギガント
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すごいー! たーのしー!
2018/02/28
菅野 直人
珍兵器や超兵器の類というと、どうしてもドイツやイギリスを思い浮かべがちですが、ロクに資源も戦力も無いのに第2次世界大戦で世界中を敵に回した我が国でも、「このくらいムチャしなきゃ勝てないだろ!」という兵器開発が行われていたとしても不思議ではありません。特攻兵器? いえいえ、日本軍超兵器のメッカ、陸軍登戸研究所で開発した数々です。
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まずトップバッターはアメリカを直接攻撃する「大陸間攻撃兵器」。
とはいえ北の某国やドイツのように大陸間弾道弾や、超重爆撃機を開発したわけじゃありません。
日本の上空、高高度には西から東へ猛烈な風「ジェット気流」が流れており、これを利用して爆弾を吊るした風船を飛ばせば、アメリカ各地で大惨事! というイメージ。
元々はデパートのアドバルーンを見た、とある陸軍将校が思いついたそうですが、同時期に爆弾を吊るした気球で満州からウラジオストクを攻撃する構想を練っていた陸軍はなぜかこれを却下、お蔵入りにしてしまいます。
あるいは極秘開発していたはずが、機密が漏れたと疑っただけかもしれませんが。
そこでこの陸軍将校、軍を退役して自前で研究所を開発してまで風船爆弾に入れ込むという熱心ぶりを見せますが、ほどなく病死して研究は陸軍登戸研究所に引き継がれたと言いますから、いよいよ陰謀論大好きな人向きな話になってきます。
とはいえ、風船爆弾そのものは割と単純で、和紙をコンニャク糊で固めた「メイジン紙」で作った気球に水素ガスを詰めて高高度まで上げ、小型の爆弾か焼夷弾を詰めるだけ。
日本海軍なんかも「風船爆弾を潜水艦から飛ばす」なんて考えてましたが、わざわざ貴重な潜水艦を浮上させてやるより本土から十分飛ばせるので、陸軍管轄で秘匿名称「ふ号兵器」として大量生産され、1944年冬から1945年春までの期間に多数飛ばされたのでした。
約9300発が放球されたうち、アメリカ側記録で到達したのは285発、山奥とかに引っかかって確認されなかったものも結構あったかもしれませんが、到達率3%というのはコスパフォーマンスを考えればまずまずなのでしょうか?
実際の被害はピクニック中の民間人6名が爆死したという「痛ましい事故」があったのみのようですが、他に電線に引っかかって停電を起こしたりもしたようです。
ただ、アメリカ軍としては「爆弾ならともかく毒ガスでも撒かれたら大変!」と思ったようで、日本側に着弾位置が知られないよう、厳重な報道管制を敷いて警戒したらしいですから、使い方によっては脅威になる、案外バカにできない兵器ではありました。
今日も帝都を灰に変えようと多数襲来する米軍の超重爆撃機B-29。
装甲も厚く、日本の戦闘機隊も奮戦するもなかなか撃墜に至らず……しかし、あーっと!
地上から強烈な光がB-29に伸びたかと思うと、爆発炎上! 墜ちます、B-29が墜ちていきます! そして光線はその数を増しました! B-29壊滅! 帝国大勝利!
……という光景を夢見て登戸研究所で研究開発されていたのが、その名も「怪力光線」です。
ちなみに「カイリキ」ではなく「クワイリキ」だったそうで、その頭文字から「く号兵器」と呼ばれていました。
地上から強力なマイクロ波を発射して敵を撃破しようというものですが、マイクロ波とはつまりレーダー波としても使われている電波で、マトモなレーダーも作れない日本軍にそんな兵器が作れるのでしょうか!?
実験では、数mの距離からウサギか何か、とにかく小動物を殺傷できたそうです。
で、その過程で開発された技術は、戦後電子レンジの開発に役立ったとかいう都市伝説もありまして(その説自体は、電子レンジを開発したのが日本メーカーではないので否定されてます)。
……もしかして、実験で殺傷した小動物というのも「スタッフがおいしくいただきました」的なオチなのかも?
怪力光線と似ていますが、それと並行して登戸研究所では「殺人光線」なるものも開発していたと言われています。
怪力線と何が違うのかと言えば、電磁波その他、対人攻撃で有効そうなものであれば一通り何でも試していたそうで、もしかしたら怪力線もその一種だったかもしれません。
とにかく登戸研究所は機密の塊なので、ハッキリしていないことも多いのです。
その中には紫外線などさまざまなものが含まれているようですが、真空管マグネトロンを用いて増幅した57種類もの高出力殺人光線「Z」の開発・実験が行われたこと自体は事実のようでした。
ただ、そのために大電力をチャージして発射してまたチャージして……などとやっているより、鉄砲をバンバン撃っていた方が手っ取り早いですし、障害物や塹壕にでも入られると結局はそれごと破壊する兵器が別に必要になってきます。
そんなわけで実用化には至らなかったようですが、もし本土決戦にでもなって登戸研究所のある神奈川県川崎市多摩区に連合軍が攻めてきたら、ままよとばかりに殺人光線で反撃したりしたのでしょうか?
何か戦後にアレコレと話が膨らんだおかげで、SF的珍兵器のイメージが強い登戸研究所ですが、比較的まっとうな? 謀略戦にも参加しています。
その代表的なものが日中戦争の際に中国経済を混乱させるべく大量の偽札を作ってバラまいた「杉作戦」。
当時としてはかなり精巧な偽札だったものの「そこそこバレる」ものだったようで、中国各地にバラまかれると当時の中国政府(中華民国政府。現在は内戦で負けて台湾のみ。)は、偽札を上回る大量の紙幣を発行して対抗します。
つまり、偽札が多少混じっていようが、それ以上に正規の紙幣を発行してしまえば経済への影響は最低限に……と、そんなわけは無く。
急激に膨大な紙幣を発行したので貨幣価値の低下、つまり大インフレを巻き起こしてしまい、蒋介石政権には何だかんだで打撃になったと言われています。
ただ、経済はかえって活性化してしまった説もあり、ハッキリしたことはわかりません。
そもそも戦時下で混乱する前から軍閥などがのさばっていた中国で、国の発行する紙幣になどどの程度信用があったのか、もしかしてドルの方が信用されていたんじゃないのか、という疑問もありますが。
最後に、最新兵器ファンならみんな大好き「レールガン」、その原型的な兵器を登戸研究所でも作ってました。
その名も「電気砲」または「電気投擲砲(でんきとうてきほう)」。
ただし登戸研究所で開発していたのは、有翼砲弾の翼の部分にレールを設け、そのレールに流した電気による電磁力を使い、電磁誘導で砲弾を発射するというもの。
レールガンと似てはいますが、どちらかといえばリニアモーターカー的に、列車の代わりに砲弾を加速させる、あるいは砲弾を打ち出す電磁カタパルト? と思えばいいかもしれません。
これなら無反動ですし砲煙もありませんから発砲時に視界への影響もありませんし、大電力を流せば既存の大砲より高初速で射程も伸ばせるかもしれない、近距離なら大威力! これはいけるぞぉ……。
しかし、当たり前ですが狙った大威力を得るためにはとんでもない大電力を要しますし、ある試算ではこれでマトモに連射のできる高射砲を作ると1門あたり発電所が2ついるという無茶苦茶な結果が出てしまいました。
そもそもレールガンなんて戦後もなかなかモノにするための理論が確立できず、アメリカや中国で実用化に近い実験砲が登場したのも2010年代に入ってからという代物です。
着想はいいんですが、技術が追い付かない「幻の超兵器」として、「大日本帝国も昔はレールガンの元祖を作ろうとしたんだよ?」と、後世にこんな世界の片隅で語られる程度で終わるのでした。
物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。
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