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2017/11/27

菅野 直人

単に変な形というだけではない! 意外に活躍した変わった飛行機たち5選

世の中変わった形の飛行機は結構あり、大抵は試作で終わりますが、中には成功して大活躍する飛行機もあります。こんなそんな変な形をした飛行機の中から、軍用機をいくつかご紹介!

離着陸時はムカデ競争、アラド・Ar232(ドイツ)

Ar 232B-0
By 不明 – British Air Ministry file “AIR 40/120”, scanned from Staerk, Christopher; Sinnott, Paul: Luftwaffe. The Allied Inteligence Files. Potomac Books, Washington D.C., 2002. p. 186. ISBN 1574885375, パブリック・ドメイン, Link

第2次世界大戦中のドイツ空軍主力輸送機といえばユンカースJu52/3mタンテ」ですが、なにぶん1930年代初期に作られた古い飛行機だったもので、大戦中にはほかにも新型輸送機がいくつか作られています。

そのひとつがアラドAr232で、肩翼式の主翼に貨物の積み下ろしが容易な後部ランプを持つなど、現在のC-130輸送機などとそう変わらない「戦術輸送機のスタンダード」が既に確立していたことを、この1941年初飛行の輸送機は示していました。

現代でも通用するスタンダード形式というなら、何が変なのと言えば着陸用の車輪。
舗装されていないデコボコの不整地でも安全に離着陸ができるよう、内側エンジンナセルから下ろされる引き込み式の主車輪のほかに、胴体下部に片側11個もの小さな小車輪を補助輪として持っていたのです。

そのため「ムカデ」などと呼ばれたAr232は、着陸時の事故で首車輪や主車輪が破損しても、この補助輪のおかげで大事故にはつながりにくく、不整地での使用には適していました。

ドイツ空軍は大型機生産を輸送機より爆撃機に振り向けたのでAr232はあまり多くは作られませんでしたが、多数の補助輪は後のC-130輸送機などでは胴体側面に格納する複数の主車輪として名残が残っています。

「紅の豚」にも出てましたよ? サヴォイア・マルケッティ S.55(イタリア)

Savoia-Marchetti S.55 felszállás közben.jpg
By 不明http://www.finn.it/regia/html/fra_le_due_guerre.htm, パブリック・ドメイン, Link

宮崎駿の名作アニメ映画「紅の豚」に1シーンのみ登場するのを、記憶している人もいるのでは?
双胴の中間頭上に前後に向けたエンジンを持つこの大型飛行艇はサヴォイア・マルケッティ・S55と言いまして、第2次世界大戦前のヒトラー台頭前からファシスト全盛期を誇ったムッソリーニを首班とするイタリアが、その威信をかけて作った飛行機です。

当時としては大型の密閉式艇体と大きな主翼、その中心から頭上高くマウントされた2基のエンジンは前後に牽引式・推進式に搭載されており、そう違和感は無いものの、飛行機としてはちょっと変わった姿。
しかし性能としてはそう悪くは無く、イタリアの威信を世界に示すため、1933年には空軍大臣イタロ・バルボ将軍率いる24機のS55がイタリアのオルベテッロからアメリカのシカゴまでの編隊大飛行を行いました。

これをもってイタリアには「われに空中艦隊あり!」を示して喝采を浴びたもので、その象徴として前述の「紅の豚」にも1カットながら登場しているわけですが、こうした表舞台はともかくイタリア空軍の内情はお粗末。

基本的に小国で予算も少ない中、背伸びをしすぎたイタリアは第2次世界大戦で空軍も機材更新が進まず旧式機で戦わざるを得なくなり、枢軸同盟国の中では真っ先に脱落するのでありました。

オスプレイやTVドラマに登場した「エアーウルフ」のご先祖? マクドネル XV-1(アメリカ)

McDonnell XV-1 NASA.jpg
By NASA/NACA, LARC, Public Domain, Link

ヘリコプターやVTOL(垂直離着陸機)の開発が成功するまではいろいろと実験的な機体が登場したもので、このマクダネル XV-1もそのひとつ。

まず見た目は後部胴体が2つあるツインブーム式の3胴機に見えて、中央胴体にローターを持ったヘリコプターに見えますが、ローター(回転翼)が1つしか無いヘリコプターによくある、回転トルクを打ち消し飛行中の機体の回転を防ぐテイルローターがありません

これはエンジンなどの動力で回す動力軸を持たず、ガスタービンエンジンからの排気をローター先端から排気する「ホットローター式」と呼ばれる機構により回転トルクが少ないためで、高温排気による腐食など耐久性の問題はあるものの、現在でもある機構です。

それより妙だったのは、ヘリコプターのような回転翼機に見えるのに、普通の飛行機のような主翼と胴体後部に推進式のプロペラを持っていたこと。
つまり、VX-1はヘリコプターではなく、ローターで垂直離着陸後、推進プロペラと主翼で飛行するというVTOL機でした。

この方式は飛行機並の高速とヘリコプター同様の垂直離着陸性能を持つ「コンバーチブル・プレーン」と呼ばれ、今話題のオスプレイもその一種で、ある意味XV-1は、メカニズムはともかく、コンセプト上はオスプレイのご先祖と言えます。

この方式は「垂直離着陸用」と「水平飛行用」のメカニズムを別々に搭載するので、どちらかを行っている時は片方のメカが何の力も生み出さない無駄な重量ということで、実用上はあまり好ましくありません。

ただし、手っ取り早くヘリコプターで高速飛行を行うには適してるということで、今でも高速実験ヘリなどではジェットエンジンと高速飛行時には停止する「Xウイング」の組み合わせで使われています。
TVドラマの「超音速攻撃ヘリ・エアーウルフ」も、そうしたコンバーチブル・プレーンの一種ですね。

珍しいアメリカンヘリ失敗作、ボーイング・バートル XCH-62(アメリカ)

ボーイング・バートル XCH-62
By 不明 – U.S. Army – en.wikipedia からコモンズに EH101CommonsHelper を用いて移動されました。, パブリック・ドメイン, Link

大重量輸送用ヘリというのは、普通の輸送機のように大きな胴体を持つとそれだけで重すぎて垂直離着陸が困難になるのと、低速飛行ゆえに機外吊り下げでも問題無いということで、重量物はクレーンで吊り下げることが多いものです。

そのため、「だったら最初からクレーンで吊り下げることしか考えない骨組みだけのヘリみたいなのでいいじゃん、キャビンが必要なら別途装着すればいいし」という発想もあり、その代表格がシコルスキーCH-54タルヘ、民間名はそのまんま「スカイクレーン」。

そのスカイクレーンのコンセプトを発展させ、さらに世界最大級の重量物吊り下げ能力を持たせようとしたのが、1970年代に開発され、1983年に頓挫したボーイング・バートルXCH-62でした。

超重量物を吊り下げても安定飛行を可能にするため、バートルお得意のタンデム・ローター(前後に大きな主ローターを持つ)として、胴体下には吊り下げ用の大型荷物が入っても大丈夫なように、思い切り長くて頑丈な脚柱を持っています。
細長い胴体の中には12名の兵員も搭乗可能、3基のターボシャフトエンジンで20トン以上の輸送能力を誇る……はずでした。

しかし、設計ミスで後部に置かれたエンジンから前部ローターを回すトランスミッションへの負荷が異常にかかるなど、設計を手堅くまとめるのが得意なアメリカ機らしからぬ失敗をしてしまい、結局試作機1機止まり。
結局、超大重量輸送ヘリは今でも旧ソ連製のミルMi-26がほとんど唯一です。

これでも朝鮮戦争では大活躍! ノースアメリカン F-82 ツインムスタング(アメリカ)

P-82
パブリック・ドメイン, Link

1950年6月、突如として北朝鮮軍が国境を突破して韓国へ侵攻、日本の植民地時代を脱して独立したばかりの両国は戦争状態に突入、朝鮮戦争が勃発します。

北朝鮮の侵略行為に対し、これまた設立間もない国際連合は国連軍の編成を決定、韓国の崩壊を防ぐべく多数の増援を送り込むことになりますが、旧ソ連や中国からの援助で強大な戦力を持つ北朝鮮軍の前に、韓国軍や在韓米軍は防戦一方。

押しに押しまくられて撤退を重ね、各地の飛行場では北朝鮮軍が迫る中、脱出のため在留外国人が輸送機に乗り込みますが、そこに迫る北朝鮮軍のYak-9戦闘機
その時、奇妙な双胴式戦闘機が現れてYak-9を撃墜、無事に輸送機は韓国から脱出したのでした……。

この「奇妙な双胴戦闘機」こそがノースアメリカンF-82ツインムスタングで、作りは単純、第2次世界大戦時に急遽開発された割にはとんでもない高性能を誇った傑作機、P-51ムスタング2機を左右で繋げたものです。
零戦なみの大航続距離を誇ったP-51ですが、さらに長大な航続距離を誇るようになったB-29やB-36のような超重爆撃機を護衛するには不足で、名機2機をつないでそれを実現したという単純明快なコンセプト

同種の機体は第2次世界大戦中にハインケル He111Z(ドイツ)などが存在し、ハイパワー高性能機を実現するにはそれほど珍奇な手法ではありません。
空戦性能を求められる戦闘機では珍しい例でしたが、高速化で昔のようにヒラヒラとアクロバット飛行のような旋回戦闘を行わない時代になったので、F-82(開発時はPー82)のような機体でも成立し得たのです。

それがたまたま朝鮮戦争時に在日米軍に配備されていたので、朝鮮戦争初期には急遽送られたF-82の上空援護によって、韓国軍や在韓米軍、そして国連軍は随分助けられました。

もっとも、すでにジェット戦闘機の時代になっていたので活躍期間は短く、F-82も初期を除けば主に左右胴体間の主翼下にレーダーを搭載し、夜間戦闘機として活躍しています。

菅野 直人

物心付いた時には小遣いで「丸」や「世界の艦船」など軍事情報誌ばかり買い漁り、中学時代には夏休みの課題で「日本本土防空戦」をテーマに提出していた、永遠のミリオタ少年。撤退戦や敗戦の混乱が大好物で、戦史や兵器そのものも好きだが、その時代背景や「どうしてこうなった」という要因を考察するのが趣味。

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